退職した従業員の労働関係書類はいつから何年保存すればよいか
要点
労働関係書類の保存期間は、5年に延長されつつ、当分の間は3年とされています。起算日は退職日で一括せず、書類の種類と支払期日を照合します。年数・起算日・その根拠を記録し、個別の保存期限や廃棄の可否は専門家に確認する進め方です。
この記事は、退職した従業員の書類を整理したい小さな会社の担当者が、労働関係書類の保存年数と起算日を公式資料で確かめる流れをまとめたものです。
公式ページ・公式ヘルプなどの一次資料を2026年11月6日に確かめました。機能や制度は変わることがあるので、使う前に各ページで最新の状態を確認してください。法律・税務・労務の判断や、効果を約束するものではありません。
例は説明のための架空の例です。確認表や作例は、当社の考えをまとめたもので、公式の機関が示しているものではありません。
1.「保存年数」と「数え始める日」を分ける
労働基準法第109条は、使用者に対し、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を5年間保存する義務を定めています。ただし、同法附則第143条第1項は、第109条の適用について、当分の間、「五年間」を「三年間」とすると定めています。
ここからは当社の整理です。
事務の記録では、適用する保存年数と、その根拠を分けて残すとよいです。原則の年数だけを転記したり、経過措置の説明を消したりすると、後から確認する人が何に基づく整理かを追えなくなります。保存の根拠となる資料の題名、該当箇所、確認した日を一緒に控えます。
年数が分かっても、それだけでは保存期限を記入できません。次に、対象の書類について、どの日から数えるのかを確かめます。退職者ごとのファイルにまとめる場合も、表紙の日付を中の書類すべてに当てはめず、書類別に日付を拾う形です。
2.退職日が起算日になる書類、ならない書類
労働基準法施行規則第56条は、保存期間の起算日を記録の種類ごとに定めています。労働者名簿は、労働者の死亡、退職又は解雇の日が起算日です。雇入れ又は退職に関する書類は、労働者の退職又は死亡の日から数えます。
一方、同条で賃金台帳の起算日とされるのは、最後の記入をした日です。賃金その他労働関係に関する重要な書類は、その完結の日が起算日です。災害補償に関する書類は、災害補償を終わった日から数えます。
社内で整理するときは、書類名の隣に「起算日となる出来事」と「実際の日付」を別々に記入すると、照合しやすくなります。日付だけの欄では、退職した日なのか、記入を終えた日なのかが読み取れません。裏付けとなる記録も対応させておくと、担当者の記憶に頼らず確認できます。
3.支払期日が遅い記録は、日付を比較する
同条第2項では、賃金台帳又は賃金その他労働関係に関する重要な書類について、その記録に係る賃金の支払期日が、最後の記入をした日又は完結の日より遅い場合、その支払期日を起算日とします。
このため、起算日の記入では、記録を終えた日だけを拾って作業を閉じず、対応する支払期日も照合することが大切です。書類を箱に収めた日や、担当者が確認した日とは欄を分けます。確認作業をした日を、保存期間の始まりとして転記しないための区別です。
社内で記録を作るときは、比較した日付、日付を拾った元資料、照合した人を残すとよいです。日付が異なる記録を見つけた際には、都合のよい方へそろえず、どの記録の何を表す日かを確かめます。書類の区分や起算日の当てはめに迷うものは、照会する事項として分けます。
4.退職時の整理は、書類を分けてから担当をつなぐ
退職者の書類をまとめて保管する前に、手元の書類を種類ごとに並べ、日付の根拠がそろっているかを確認します。先に箱の廃棄予定日を決めてから中身を合わせる進め方では、書類ごとの差を見落としやすくなります。整理を担当する人と、給与の記録を持つ人が別なら、日付の照合を引き継ぐ場面を設けるとよいです。
| 担当の例 | 作業する場面 | 用意するもの | 残す記録 |
|---|---|---|---|
| 退職対応の担当者 | 退職時の書類を集めたとき | 書類の現物と一覧 | 書類名、種類、所在、不足しているもの |
| 給与の担当者 | 記入の完了を確認するとき | 最後の記入や支払いの予定が分かる記録 | 比較する日付と、それぞれの意味 |
| 保存を管理する担当者 | 日付の根拠を照合するとき | 公式資料の該当箇所と手元の記録 | 起算日、保存年数、根拠、確認した人 |
| 責任者 | 不明点を照会するとき | 対象書類と、分からない点をまとめたメモ | 照会先、質問、回答、確認待ちの事項 |
| 保管の担当者 | 書庫へ収めるとき | 照合を終えた一覧と現物 | 保管先、管理する人、次に見直す時期 |
記録の状態は、「書類が集まった」「日付を照合した」「照会の回答を待っている」など、作業の進み具合が分かる言葉で残します。未記入の欄を推測で埋めず、確認する人と次の行動を付けます。保管担当者へ渡す際にも、何が未解決なのかを読み合わせるとよいです。
保存期限を記入した一覧と、廃棄を承認した記録は役割が異なります。書類の整理が済んだことを、そのまま処分の承認として扱わない運用にします。
5.期間が過ぎた後の扱いは、事情を添えて確認する
厚生労働省のQ&Aは、退職金の時効が5年であることや時効の更新などにより、3年を経過しても労働関係書類が必要になることがあると説明しています。
保存年数の確認と、目の前の書類を廃棄できるかの判断は分けて進めます。相談するときは、対象書類、日付の根拠、現在も確認が続いている事項をそろえると、迷っている点を伝えやすくなります。回答は結論だけでなく、どの書類と事情について受けたものかを記録する形です。
厚生労働省のリーフレットは、不明な点や質問は、事業所の所在地を管轄する都道府県労働局または労働基準監督署に尋ねるよう案内しています。具体的な保存期限の当てはめや、保管を続ける必要性、廃棄の可否は、公式資料と対象の書類を示して専門家に確認します。
6.確認表
公開・共有の前に、この表で確かめます。
| 確認 | 確かめること |
|---|---|
| □ | 保管する書類を、種類ごとに分けたか |
| □ | 保存する年数と、その根拠を記録したか |
| □ | 起算日となる出来事と、実際の日付を対応させたか |
| □ | 記入や記録の完了を示す日と、支払期日を照合したか |
| □ | 不明点について、確認する人と照会する内容を決めたか |
| □ | 保管先と、継続して確認する事項を担当者へ渡したか |
| □ | 保存期限の記録と、廃棄の判断を分けたか |
7.自社の事務の手順まで形にしたいとき
ここまでの確認を、自社の事務の手順書や、AIの結果を確かめる検査まで形にしたい場合は、当社のように、手順と検査の設計まで行う相談先が選択肢になります。オンラインは全国から対応しています。
自社の事務のどこから確認を入れるかを相談したい場合は、初回無料相談をご利用ください。法律・税務・労務の判断や、効果の約束は行いません。
出典(確認日:2026年11月6日)
- 労働基準法:第109条の保存義務と対象書類、附則第143条第1項の経過措置
- 労働基準法施行規則:第56条の書類別の起算日と、賃金の支払期日が遅い場合の扱い
- 賃金台帳等の労働契約関係の書類の保存期間は何年ですか?:期間が経過しても書類が必要になることがある点
- 未払賃金が請求できる期間などが延長されています:保存期間の原則と経過措置、所在地を管轄する相談窓口
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