Sample · Report
業務の棚卸しとAI化プラン レポートの見本
「業務の棚卸しとAI化プラン」で納品するレポートの見本です。架空の設備工事会社を題材に、7節を実物と同じ構成で書きました。
この見本は、架空の会社を題材に作ったものです。実在の会社、実在の数値ではありません。実際のレポートは、ヒアリングで出た貴社の業務で作ります。
Section 1
1. 現在の業務の一覧
ヒアリング90分で出た業務を全部並べます。価値は漏れがないことです。件数はヒアリング時の申告で、実測ではありません。
- 題材
- 設備工事会社A社(架空)。滋賀県彦根市。空調と給排水の設備工事。
- 人数
- 12名。現場9、営業1、事務1、代表。
- 困りごと
- 事務1名の残業が月20時間を超えている。
| # | 業務 | 月の件数 | 担当 | いまの道具 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 見積書の作成 | 15件 | 事務・代表 | Excelの様式 |
| 2 | 請求書の作成と送付 | 30件 | 事務 | Excel。郵送かメール |
| 3 | 入金の消込 | 30件 | 事務 | 銀行明細と台帳 |
| 4 | 経費の領収書の整理 | 80枚 | 事務 | 紙と会計ソフト |
| 5 | 現場日報の転記 | 180枚 | 事務 | 紙から工事台帳へ |
| 6 | 材料の発注書 | 25件 | 現場責任者・事務 | FAXとメール |
| 7 | 協力会社への支払通知 | 10件 | 事務 | Excelからメール |
| 8 | 協力会社との金額交渉 | 3件 | 代表 | 電話・対面 |
| 9 | 給与計算の前処理(勤怠の集計) | 1回(12名分) | 事務 | タイムカード |
| 10 | 社会保険の届出 | 年5件ほど | 事務 | 紙。社労士に確認 |
| 11 | 労災の書類 | 年2件ほど | 事務 | 紙 |
| 12 | 安全書類(グリーンファイル)の作成 | 5件 | 事務・現場責任者 | 元請の様式 |
| 13 | 電話の一次対応 | 120件 | 事務 | 電話とメモ |
| 14 | 問い合わせメールの返信 | 20件 | 事務・営業 | メール |
| 15 | 名刺の登録 | 15枚 | 営業 | Excel |
| 16 | 会議の議事録 | 2回 | 事務 | Word |
| 17 | 求人票の作成 | 年3回 | 代表 | ハローワークの様式 |
| 18 | ホームページのお知らせ | 1件 | 代表 | 管理画面 |
| 19 | 備品の発注 | 4件 | 事務 | 通販サイト |
| 20 | 車両の点検記録 | 6台 | 現場責任者・事務 | 紙 |
| 21 | 年末調整の準備 | 年1回 | 事務 | 紙 |
| 22 | 工事写真の整理 | 10現場 | 現場責任者 | 共有フォルダ |
事務1名が担当に入るものは、22件中17件です。
Section 2
2. 3つへの振り分け
22件を、①AIに任せられる、②検査をつければ任せられる、③人がやるべき、に分けます。結果は①4件、②14件、③4件です。
| # | 業務 | 振り分け | 間違いに気づくまで |
|---|---|---|---|
| 14 | 問い合わせメールの返信 | ① AIに任せられる | 送る前。人が読む |
| 16 | 会議の議事録 | ① | 配る前 |
| 17 | 求人票の作成 | ① | 出す前 |
| 18 | ホームページのお知らせ | ① | 公開前 |
| 2 | 請求書の作成と送付 | ② 検査をつければ任せられる | 入金時。翌月末 |
| 1 | 見積書の作成 | ② | 着工後 |
| 3 | 入金の消込 | ② | 督促時。数か月後 |
| 4 | 経費の領収書の整理 | ② | 決算時。最長1年 |
| 5 | 現場日報の転記 | ② | 請求時。翌月 |
| 6 | 材料の発注書 | ② | 納品時。数日後 |
| 7 | 協力会社への支払通知 | ② | 支払後。相手の指摘 |
| 9 | 勤怠の集計 | ② | 支給後。本人の指摘 |
| 12 | 安全書類の作成(下書きまで) | ② | 元請の受付時 |
| 15 | 名刺の登録 | ② | 次に連絡するとき |
| 19 | 備品の発注 | ② | 納品時 |
| 20 | 車両の点検記録 | ② | 次の点検時。1か月後 |
| 21 | 年末調整の準備 | ② | 提出時 |
| 22 | 工事写真の整理 | ② | 元請への提出時 |
| 8 | 協力会社との金額交渉 | ③ 人がやるべき | 「間違い」の形にならない |
| 10 | 社会保険の届出 | ③ | 社労士の領域 |
| 11 | 労災の書類 | ③ | 社労士の領域 |
| 13 | 電話の一次対応 | ③ | 緊急の連絡が混じる |
②でAIに任せるのは下書きと突合の案までです。単価は人が入れ、年末調整の計算は税理士です。安全書類は下書きが②、最終確認が③です。
Section 3
3. 振り分けの理由
分ける物差しは1つです。難易度ではなく、「間違いに気づくまでの時間」で分けます。
AIは止まるより先に、動いているように見えたまま成果を出さなくなります。動いて見えると、気づくのは間違いが表に出たときです。
①は、出す前に人が読む文章です。読んだ人がその場で直します。人が読むことが検査です。
②は、表に出るのが遅い仕事です。請求書の宛名が違っても、気づくのは翌月末の入金時です。領収書の仕分けなら決算までです。AIの出来が悪いから検査をつけるのではありません。気づくのが遅いから、気づく手順を先に作ります。
③は、間違いが「間違い」という形で返ってこない仕事です。交渉で譲りすぎても、誰も指摘しません。電話には漏水の連絡が混じり、取り違えたときには現場が動いています。
社会保険と労災は、別の理由で③です。社労士の領域で、当社は扱いません。
難しさは見ていません。最も難しい見積書は②です。最も易しい名刺の登録も、誤字が次に連絡するまで分からないので②です。
Section 4
4. すぐ試せる1業務ぶんの完成手順
選んだのは請求書の作成です。月30件と多く、間違いに気づくのが入金時、つまり翌月末で遅い。②の典型です。
- いまの手順
- 工事台帳を見ながらExcelの様式に1件ずつ入力する。1件10分、30件で5時間。いずれも事務担当の見積もりで、実測ではありません。変えるのは下書きを作る部分だけです。
- 前提
- 工事台帳に、文面にある6列があること。AIはお手元のClaude。ChatGPTやGeminiでも同じ文面で動きます。
手順
- 1 台帳を絞る
- 「請求月=今月」で絞り、6列をコピーします。件数を自分で数えてメモします。
- 2 AIに投げる
- 下の文面を貼り、続けて表を貼ります。
- 3 確かめる
- 下の5項目を上から順に。外れたら下書きは直さず、台帳を直して2から。
- 4 様式に流し込む
- 通った下書きをExcelの様式に写します。ここは当社が差し込みで作ります。
- 5 開いて記録する
- 送付前に1件ずつ開き、宛名と金額を見ます。処理ログに1件1行で書きます。
AIに投げる文面(そのまま貼れます)
あなたは請求書の下書きを作る係です。 このあとに貼る表は、今月完了した工事の一覧です。列は「案件番号、工事名、宛名、税抜金額、完了日、請求月」です。 表の1行につき1通、次の形で下書きを作ってください。 ・宛名は表のとおり。敬称は「御中」 ・案件番号と工事名は、表の文字をそのまま写す ・税抜金額、消費税(10%。1円未満は切り捨て)、税込金額の3つを分けて書く 最後に、作った通数と、税込金額の合計を書いてください。 表にない情報は補わないでください。分からない欄は「不明」と書いて止めてください。
最後の2行が要です。ないと、AIは空欄を埋めて先へ進みます。
確かめ方
| # | 確かめること | やり方 | 外れたら |
|---|---|---|---|
| 1 | 件数の突合 | メモした件数と下書きの通数を比べる。AIが書いた通数ではなく自分で数える | 足りない行を探す |
| 2 | 合計金額の検算 | 税抜金額の合計を1.1倍し、下書きの合計と比べる。下書きが0〜30円小さいのは正常(1件ごとの切り捨て) | 30円を超えたら、1件ずつ見る |
| 3 | 宛名と工事名の突合 | 下書きと台帳を並べて30件読む。「株式会社」の前後、旧社名、似た名前に注意 | 台帳側を直す |
| 4 | 消費税の丸め | 端数のある案件を1件選び、電卓で切り捨てて比べる | 丸めの指定を入れ直す |
| 5 | 「不明」の有無 | 下書きを「不明」で検索する | 台帳の欠けを埋めて、2から |
最初の1か月は、手で作った請求書とAIの下書きを30件すべて並べます。差が0件になるまで文面を直し、翌月から上の5項目だけにします。
Section 5
5. その業務の検査の設計
AIの報告ではなく、処理ログの行数と、人が開いた件数で「終わった」を決めます。
処理ログの列
| 日付 | 案件番号 | 宛名 | 金額(税込) | 検査の合否 | 確認者 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 10/31 | H26-0142 | 取引先A 建設会社 | 418,000 | 合 | 事務 | |
| 10/31 | H26-0147 | 取引先B ビル管理会社 | 1,358,023 | 否 | 事務 | 前月比+42%。代表へ |
シートは当社が作ります。合否は「合」「否」の2値だけです。
合否の基準
第4節の5項目と次の2つを満たしたら「合」。1つでも外れたら「否」です。
- 金額の幅
- 同じ宛名の前月請求額の±30%の中。外れたら代表に回す。前月の請求がない宛名は「初回」として代表が見る。
- 空欄
- 備考を除く6列に、空欄と「不明」がないこと。
人が最終確認する位置
送付の直前。1件ずつ開き、宛名と税込金額を送る形(PDFか印刷)で見ます。30件で15分の見積もりです。省くと、気づくのが翌月末に戻ります。
月次レポートに載せる数
| 数 | 出どころ | 種類 |
|---|---|---|
| 処理件数 | 処理ログの行数 | 実測 |
| 検査を通った件数 | 「合」の行数 | 実測 |
| 差し戻し件数と理由 | 「否」の行数と備考 | 実測 |
| 人が最終確認した件数 | 送付した件数 | 実測 |
換算時間(10分の見積もり × 通った件数の実測)は別の表にし、「換算」と明記します。減る時間は約束しません。
Section 6
6. 残りの業務の着手順とその理由
②の14件を一度に変えません。事務は1名で、同時に変えられる手順は1つです。1つが1か月回ってから次へ。
| 順 | 業務 | 理由 | 前の業務との関係 |
|---|---|---|---|
| 1 | 請求書の作成 | 件数が多く、気づくのが遅い。第4節がそのまま使える | ― |
| 2 | 見積書の作成 | 同じ台帳と宛名。請求書の検査5項目を流用できる | 請求書で整えた台帳を使う |
| 3 | 入金の消込 | 気づくのが督促時で最も遅い。突合の相手は請求書の処理ログ | 請求書のログがないと作れない |
| 4 | 経費の領収書の整理 | 月80枚。決算まで見えない。検査は枚数の突合 | 請求書と同じ「数える」検査 |
| 5 | 現場日報の転記 | 月180枚で最多だが、紙の読み取りの誤りが先に問題になる。1か月、誤読を数えてから | 請求書が安定してから |
残りの9件(発注書、支払通知、勤怠、安全書類の下書き、名刺、備品、車両、年末調整、工事写真)は5件が回ってからです。
③に置いたもの
- 協力会社との金額交渉
- 間違いが「間違い」の形で返ってこない。
- 社会保険の届出、労災の書類
- 社労士の領域。当社は扱わない。
- 安全書類の最終確認
- 誤りは「現場に入れない」という形で返ってくる。
- 電話の一次対応
- 漏水などの緊急連絡が混じる。
Section 7
7. 減らした時間を、何に変えるか
時間が減っても、費用は自動では減りません。減った時間を何に変えるかを決めて、はじめて費用か売上のどちらかが動きます。ここを決めずに始めると、「楽になった気はするが、数字は変わらない」で終わります。
変え方は3つしかありません
| 変え方 | 何が動くか | A社の場合 |
|---|---|---|
| ① 残業を減らす | 人件費(残業代)が減る | ここが効きます。事務1名の残業が月20時間を超えています |
| ② 空いた時間を別の仕事に使う | 費用は動かない。売上の余地ができる | 見積の件数を増やす。工事写真の整理を後回しにしない |
| ③ 人手を減らす | 人件費が大きく減る | 該当しません。事務は1名です |
A社の見取り図
第4節の請求書だけで月5時間。第6節の5件まで進むと月12〜15時間の見込みです。残業が月20時間なので、そのほとんどを①で受けられます。
| 項目 | 値 | 出どころ |
|---|---|---|
| 減る見込みの時間 | 月12〜15時間 | 第4節・第6節の1件あたりの時間 × 件数 |
| 残業の時間単価(仮) | 1,800円 | 仮の数字です。貴社の給与台帳で確認してください |
| 動く費用(推定) | 月 21,600〜27,000円 | 上の2つの掛け算 |
この欄はすべて推定です。実測ではありません。当社は税務・会計の判断はしません(税理士の領域)。どの費用が動きうるかの見取り図までをお示しします。勘定科目の扱いや申告は、貴社の税理士にご確認ください。
当社の報酬との関係
顧問料は「節約時間 × 時給 × 50%」です。上の例なら月10,800〜13,500円。残りの50%が貴社に残る形にしてあります。
🔴 ただし、②を選んだ場合も料金は発生します。費用が減っていなくても、時間は減っているためです。だから、どれを選ぶかを先に決めます。
この規模では、顧問をお勧めしません
顧問には4か月目から最低額がかかります(いちばん小さいライトで月5万円)。最初の3か月は下限がないので、 上の式のまま月10,800〜13,500円です。ところが4か月目からは、同じ仕事の量でも月5万円になります。 A社の見込みは最低額の2〜3割で、減らせた価値より払う額のほうが大きくなります。
| 比べるもの | 額(月・税別) | 判定 |
|---|---|---|
| ① 見込みの顧問料(式のとおり) | 10,800〜13,500円 | ― |
| ② ライトの最低額(4か月目から) | 50,000円 | ①は②の2〜3割 |
| ③ 年商からの上限(仮に年商8,000万円) | 500,000円 | 効きません |
ですので、A社には「棚卸しで終える」ことをお勧めします。第4節の手順はそのままお使いいただけます。 事務の量が増えて、月50時間ほど(時給2,000円のとき)を任せられるようになったら、そのときに顧問をご相談ください。 当社は、届いていない会社を顧問に入れません。
この節は見本のために正直に書いています。実際のレポートでも、①②③を並べて同じ判定をお見せします。 数えた結果が最低額に届かないときは、当社の側からお断りします。
先に決めていただくこと
- ①を選ぶなら
- いつから残業を減らすか。減らす人と、減らす時間。
- ②を選ぶなら
- 空いた時間を何に使うか。使い道が決まっていない時間は、費用にも売上にもなりません。
- どちらでもない
- それも結構です。その場合は「楽になること」が目的だと、先に決めておきます。
レポートはここまでです。この先は顧問の範囲です。棚卸しだけで終えて構いません。