生成AIの社内ルールの作り方。最初に決める6項目と、参考にできる公的な資料
要点
生成AIの社内ルールは、長い規程より先に、①使ってよいサービスとアカウント、②入れない情報、③置き換えのやり方、④出力を人が確かめること、⑤使ったことの記録、⑥迷ったときの相談先、の6つを短く決めると始めやすくなります。ひな形は日本ディープラーニング協会(JDLA)の「生成AIの利用ガイドライン」、考え方の土台は経済産業省・総務省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」が参考になります。
この記事は、従業員が数人から数十人の会社で、ChatGPT や Claude などの生成AIを仕事に使い始めるときのルールづくりを想定しています。
法律の判断や助言ではありません。個別の判断は、弁護士などの専門家にご相談ください。
6項目と「書き方の作例」は、説明のための当社の作例です。公的な決まりではありません。
1.なぜ、使い始める前に決めるのか
生成AIのサービスは、個人でもすぐに使い始められます。会社として決める前に、従業員が個人のアカウントで仕事の文書を入力している、ということも起こりえます。入力した内容がどう扱われるかは、サービスとプラン、設定によって違います(4で確かめ方を紹介します)。
個人情報保護委員会は2023年6月2日の注意喚起で、事業者が個人データを含むプロンプトを入力する場合は、提供する事業者が機械学習に利用しないこと等を十分に確認するよう求めています。誰が、どのサービスに、何を入れてよいかを先に決めておくと、この確認を会社として一度にできます。
2.最初に決める6項目
| 項目 | 決めること | 書き方の作例 |
|---|---|---|
| ①使ってよいサービスとアカウント | 会社が契約したサービス・プランだけを仕事に使うか | 仕事の情報は、会社が契約した〇〇(法人向けのプラン)でだけ扱う。個人のアカウントでは扱わない。 |
| ②入れない情報 | 個人情報、秘密を守る約束をした情報、パスワードなどの認証の情報、公表前の社内の情報 | 次の情報は入力しない:社員名簿、お客様の連絡先、取引先との契約書、パスワード、公表前の価格表。 |
| ③置き換えのやり方 | どうしても使うときに、名前や金額をどう置き換えるか | お客様の名前は「A社」、金額は仮の数字に置き換える。結果を元に戻すのは人が行う。 |
| ④出力の確認 | AIの出力を、誰が、何と照らして確かめるか | 社外に出す文書と数字は、元の資料と照らして担当者が確かめてから使う。 |
| ⑤記録 | 何にAIを使ったかを残すか | 社外に出す文書をAIで作ったときは、使ったサービスと確かめた人を記録に残す。 |
| ⑥相談先 | 迷ったときに誰に聞くか | 判断に迷ったら、〇〇(担当者)に相談する。 |
業種や扱う情報によって、足すべき項目は変わります。最初は6項目を1枚に収め、細かい決まりは必要になってから足す方が、守られやすいと考えます。
3.参考にできる公的な資料とひな形
- 経済産業省・総務省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(2026年3月31日):AIの開発者・提供者・利用者が取り組むことをまとめた指針です。本編のほか、チェックリストとワークシート(別添7)も公開されています。
- 日本ディープラーニング協会(JDLA)「生成AIの利用ガイドライン」(第1.1版・2023年10月公開):組織が生成AIを導入するときの利用ガイドラインのひな形です。「条項のみ」と「簡易解説付」があり、組織の目的に合わせて追加や修正をして使うよう案内されています。画像編(第1版・2024年2月公開)もあります。
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(2023年6月2日):事業者が個人情報を含む入力をするときの注意点です。
ひな形をそのまま写すより、自社で実際に使う場面(見積書の下書き、議事録、メールの返信など)に合わせて短くする方が、読まれて守られるルールになると考えます。
4.使うサービスの学習設定を確かめる
同じサービスでも、個人向けと法人向けで扱いが違います。2026年10月30日に公式のヘルプで確かめた内容は次のとおりです。
| サービス | 個人向け | 法人向け |
|---|---|---|
| ChatGPT(OpenAI) | Free・Plus・Pro は、内容がモデルのトレーニングに使われることがあり、設定でオフにできる。オフにしていても、回答に高評価・低評価のフィードバックを送ると、その会話全体が使われることがある | Business・Enterprise・Edu と API の入力・出力は、既定ではモデルの改善に使われない。回答へのフィードバックも、トレーニングへの利用を許可するものではない |
| Claude(Anthropic) | Free・Pro・Max は、改善への利用を許可した場合などにチャットが使われる。シークレットチャットは使われない | Claude for Work・API などの商用製品は、既定では入力・出力を訓練に使わない。フィードバックを明示的に送った場合などは使われることがある |
条件は変わることがあります。ルールには「確かめた日」と「見直す時期」を書いておき、使うサービスやプランを変えたときにも見直します。
5.ルールを守られるものにする3つの工夫
- 1枚に収める:最初は6項目を1枚に。細かい規程は、必要になってから足します。
- 自社の書類の名前で書く:「入れない情報」は、「個人情報」だけでなく「社員名簿」「見積書」のように、自社で実際に扱う書類の名前を例に書きます。
- 見直す日を決める:使うサービスやプランを変えたとき、または半年に1回など、見直す時期を決めて書いておきます。
6.社内ルールの確認表
| 確認 | 確かめること |
|---|---|
| □ | 仕事に使ってよいサービスとプランを決めた |
| □ | 個人のアカウントで仕事の情報を扱うかどうかを決めた |
| □ | 入れない情報を、自社の書類の名前を例にして書いた |
| □ | 置き換えのやり方を決めた |
| □ | AIの出力を、誰が何と照らして確かめるかを決めた |
| □ | 記録に残す範囲を決めた |
| □ | 迷ったときの相談先を決めた |
| □ | 使うサービスの学習の設定を公式のヘルプで確かめ、確かめた日を書いた |
| □ | 見直す時期を書いた |
出典(確認日:2026年10月30日)
- 経済産業省「AI事業者ガイドライン」(第1.2版・2026年3月31日):本編・別添・チェックリストとワークシート(別添7)
- 日本ディープラーニング協会「資料室」生成AIの利用ガイドライン:第1.1版(2023年10月公開)・画像編 第1版(2024年2月公開)
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(2023年6月2日):別添1(1)個人情報取扱事業者における注意点
- OpenAI ヘルプセンター「モデルのパフォーマンスを向上させるためのデータの使用方法」
- Anthropic プライバシーセンター「私のデータはモデルトレーニングに使用されていますか?」(消費者向け)
- Anthropic プライバシーセンター「私のデータはモデルトレーニングに使用されていますか?」(商用顧客向け)