転記ミスの原因と防止策。件数・合計・重複の3つで照合する
要点
転記ミスは、写す回数を減らすことと、写したあとに元の資料と照合することで減らします。照合の基本は、件数(行の数が合うか)、合計(金額の合計が合うか)、重複(同じものが2回入っていないか)の3つを、元の資料と写した先の両方で数えて比べることです。Excel では COUNTA・SUM・COUNTIF の3つの関数で確かめられます。
この記事は、請求書・注文書・申込書などの内容を、台帳や一覧表へ写す事務を想定しています。AIを使うかどうかに関係なく使える確かめ方です。
表の数式の範囲(A2:A200 など)は説明用の例です。実際の表の列と行に合わせて変えてください。
1.転記ミスは、5つの型に分けると探しやすい
「ミスがあった」で止めずに、どの型のミスかを分けると、見つけ方が決まります。
| 型 | 起きること | 見つけ方 |
|---|---|---|
| 桁・数字の写し間違い | 12,800 を 18,200 と書く、桁を1つ落とす | 金額の合計を元の資料と比べる |
| 行のずれ | 1行上の取引先の金額を写してしまう | 件数と、行ごとの取引先名を見比べる |
| 二重入力 | 同じ明細を2回写す | 伝票番号などで重複を数える |
| 漏れ | 明細を1行飛ばす | 件数を元の資料と比べる |
| 表記のゆれ | 「株式会社」と「(株)」、全角と半角が混ざる | 取引先名で数えたとき、同じ会社が別々に数えられていないか見る |
どの型が多いかは、職場や資料によって違います。この記事では割合の数字は出しません。自社で見つかったミスを型ごとに記録しておくと、どこから手を打つかを決めやすくなります。
2.防ぎ方は「写す回数を減らす」と「照合する」の2つ
一つ目は、写す回数そのものを減らすことです。元の資料がCSVやExcelで届くなら、手で打ち直さずに取り込みます。同じ内容を2つの表に打っているなら、片方からもう片方を参照します。取引先名を選んで入れる形にすると、表記のゆれも起きにくくなります。
二つ目は、写したあとに照合することです。ミスがまったく起きない入力の方法はないので、起きたミスを見つける手順を先に決めておきます。Microsoft のサポートページも、数式に値を直接打ち込む足し算は入力ミスが起きやすいとして、値をセルに置いて SUM 関数で合計する方法を勧めています。
3.照合の3つの確認:件数・合計・重複(Excel)
3つとも、元の資料と写した先の両方で数えて、同じになるかを見ます。
| 確認 | 比べるもの | Excel の関数の例 | 合わないときに疑う型 |
|---|---|---|---|
| 件数 | 元の資料の明細の行数と、写した先の行数 | =COUNTA(B2:B200) | 漏れ・二重入力 |
| 合計 | 元の資料の金額の合計と、写した先の金額の合計 | =SUM(E2:E200) | 桁・数字の写し間違い・漏れ・二重入力 |
| 重複 | 同じ伝票番号が2回以上入っていないか | =COUNTIF($B$2:$B$200,B2) | 二重入力 |
件数:COUNTA は「空白でないセル」を数える
COUNTA 関数は、範囲の中で空白でないセルの数を数えます。Microsoft のサポートページによると、空の文字列("")を返す数式が入ったセルも数えます。数式が入った空欄のある列で数えると、件数が多く出ることがあります。件数は、伝票番号のように必ず値が入る列で数えます。
合計:同じ範囲を両方で足す
元の資料にも合計欄があれば、その数字と写した先の SUM の結果を比べます。合計が合っていても、行のずれ(金額は合っているが取引先が違う)は見つかりません。件数・重複とあわせて使います。
重複:COUNTIF で同じ番号の数を数える
COUNTIF 関数は、範囲の中で条件に合うセルの数を数えます。伝票番号の列の隣に上の式を入れて下までコピーすると、各行の番号がいくつあるかが出ます。2以上の行が重複の候補です。番号のない資料では、日付・取引先・金額を1つのセルにつないだ列を作り、その列で数えます。
重複の候補は、すぐに消さずに元の資料で確かめます。同じ日に同じ金額の取引が、本当に2件あることもあるためです。
4.同じ見方で2回見るだけのダブルチェックは、見落としが重なりやすい
担当者が写したものを、もう一人が同じ資料を横に置いて、上から順に見比べる。この方法は、2人目も1人目と同じ順番・同じ見方で見るので、1人目が見落とした所を2人目も見落とすことがあります。
そこで、2回目は見方を変えます。1回目が行ごとの見比べなら、2回目は件数・合計・重複を数えて比べ、合わなかった所だけを行ごとに見直します。数えて比べる方法は、誰がやっても同じ結果になるので、確認した記録も残しやすくなります。
5.AIに転記を任せる場合も、同じ照合が要る
AIに明細を読み取らせて一覧へ写す場合も、写した結果の件数・合計・重複を、元の資料と比べる手順は変わりません。AIが写した結果も、人が写した結果と同じく、元の資料と数えて比べるまでは正しいかどうか分かりません。
AIへの指示の書き方と、重複の候補や読み取れない行を「保留」として残す方法は、6行の架空明細を使ったAIで転記作業・集計を進める手順で紹介しています。Excel・CSV で重複を確かめる手順は、同じページの重複を確かめる手順にあります。
6.転記したあとの確認表
印刷するか、表の横に置いて使います。
| 確認 | 確かめること |
|---|---|
| □ | 写す前に、元の資料の明細の件数を数えた |
| □ | 写した先の件数が、元の資料と同じ |
| □ | 金額の合計が、元の資料と同じ |
| □ | 伝票番号(なければ日付・取引先・金額)で重複の候補を出した |
| □ | 重複の候補を、元の資料で1件ずつ確かめた |
| □ | 取引先名の表記がそろっている(株式会社と(株)、全角と半角) |
| □ | 合わなかった所と、直した内容を記録した |
| □ | 確認した人と日付を書いた |
7.転記の確認を、毎月の仕組みにしたいとき
毎月同じ転記がある場合は、元の資料の形、照合する列、重複や読み取れない行の扱いを決めておくと、担当が替わっても同じ確認ができます。手順の実演は転記・集計の実演ページにあります。
自社の転記作業で、どこから照合を入れるかを相談したい場合は、30分の無料相談をご利用ください。
出典(確認日:2026年10月30日)
- Microsoft サポート「COUNTA 関数」:空白でないセルを数える。空の文字列("")を返す数式のセルも数える
- Microsoft サポート「SUM 関数」:値を直接打ち込む足し算は入力ミスが起きやすく、セルに置いて SUM で合計する方法
- Microsoft サポート「Microsoft Excel で COUNTIF 関数を使用する」:条件に合うセルの数を数える